こんにちは、なかぶです。
千葉県の中央部、木更津駅から君津市の上総亀山駅を結ぶ久留里線ついて、衝撃的なニュースが飛び込んできたのが3月8日のこと。
こんな内容でした。
地方鉄道の存続が課題となるなか、JR東日本は久留里線の一部区間について、バス路線への転換を視野に、自治体に協議を打診する方針を固めたことがわかりました。JR東日本が不採算を理由にバス転換に向けて動き出すのは今回が初めてで、今後の協議の行方が注目されます。https://t.co/4VDV1jT5fo
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) March 8, 2023
※一部区間というのは久留里ー上総亀山間です
翌日JR東日本から発表されたリリースの内容によれば、「バス路線への転換を視野に」という具体的なことは書かれていなかったので、NHKの勇み足といえばそうかもしれませんが、廃止を前提とした議論になることは明白…。
そんな先行きが混とんとしてきた久留里線の久留里ー上総亀山間に乗車してきましたので、現状についてちょっと考えてみたいと思います。
久留里線はここを走っている
JR久留里線は木更津駅から君津市の上総亀山駅を結ぶ全長32.2kmの路線。
千葉県のこの位置を通っています。
この路線の末端、久留里から上総亀山の間9.6kmが赤字すぎる!とJRが困ってしまっている感じになっています。
土曜日の下り1番列車に乗車
本来は通勤通学のある平日に乗車したほうが実情を見ることができると思いますが、まずは土曜日の上総亀山行き下り1番列車に乗車してみました。
木更津発は6:25で上総亀山には7:36に到着する列車です。
運転士さんだけで車掌さんがいないワンマン運転ですね。
今の車両が導入されたときから合理化のために一部列車でワンマン運転が行われています。
久留里線内ではSuicaなどの交通系ICカードが使えないため、乗車券を購入しました。
往復券で買ったので金額の記載はありませんが、木更津から上総亀山まで片道680円です。(意外と高い)
発車5分前にホームに降りると2両編成のディーゼルカー(電車じゃない)が停車中で、2両に乗客は5人ほど。
発車前に隣のホームに千葉からの普通列車が到着して数人の乗車があり、それでも10人以下で定刻に木更津駅を出発しました。
祇園、上総清川、東清川…と田んぼの中を進んでいきます。
2両編成はワンマン運転
2両編成の列車はワンマン運転なので、駅員がいる駅(木更津、横田、久留里)以外の駅では、乗車は先頭車両の一番後、降車は先頭車両の一番前(運転席の横)で行います。
利用の仕方が木更津駅に貼ってありました。(車内にも説明があると思います)
途中駅で乗車しようとした方が、乗る場所がわからないようで、運転士さんが降りてきて教えてあげていました。
2両目はドアが開かないし、確かに乗りなれないと難しいかもしれませんね…。
横田では久留里方面から来る列車と行き違い。
久留里線は全線単線で、行き違い(交換)ができる駅は、今では横田と久留里だけになっています。(昔は馬来田でも交換できたらしい)
ライバルの国道と並走
横田で交換を行い、東横田、馬来田、下郡と進み、下郡からは久留里線のライバル?である国道410号のバイパスと並走。
昔と違って、房総も高速道路や国道など道路網の整備が進み、モータリゼーションが一気に進みましたよね。
そうして苦境に立つ、房総の鉄道…。
国道410号は今もバイパスの延伸工事を行っていますが、これができたらどうなっちゃうんでしょうね。
バイパスは俵田あたりまで並走して、離れていきます。
いよいよ問題の区間
乗車して50分ほどで久留里に到着。
行き違いのため3分ほど停車して発車しました。
上総亀山から来た列車はたぶん久留里線最長の4両編成!
運用の都合もあるのだと思いますが、この時間にこの長さ?とちょっと思いましたよ…。
ここから上総亀山までの9.6kmが問題の区間。
JRの発表によれば、100円の運賃収入を得るために19,110円の経費がかかる(営業係数19,110)という超ローカル線です。
経費2億8100万円がかかって100万円※の売り上げしかないとか…数字だけ見ると、確かに廃線になってもおかしくない区間ですね。
※100万円以下の数字は切り捨てで発表されていますが、資料を読み込むと140万円くらいは売上ありそうな感じです(焼け石に水?)
なかぶの乗車した列車は久留里発車時点で乗客4人。(なかぶ含む)
そのうち旅行者っぽい人はなかぶのほかにもう1人だったので、実質地元の人は2人という感じです。
久留里を出発してもここまでと変わらない田園風景の中を進みます。
5分ほどで焼きそばの志保沢が有名な平山に到着。
ここで1人下車しました。
平山を過ぎても、終点の1つ手前の上総松丘までは田んぼの中を走っていきますが、上総松丘から先、上総亀山までの3.9kmは山の中を走行。
トンネルも多く、大雨が降ったときなど、真っ先に不通になる区間ですね。
エンジンもうなりを上げて上っていきます。
そうして木更津から70分ほどで到着するのが、終点の上総亀山。
駅名標の右側に駅名が書いてない、本当の終着駅です。
線路はホームから100mほど先で終了。
ひし形の中に3,4と書いてあるのは3両、4両の列車が到着したとき、客扱い終了後にそこまで進んでから折り返すための停車位置目標のようです。
駅から出て、線路の終端まで行ってみました。
線路がぷつっと切れていて、当たり前ですがこの先には行けないということがよくわかります。
この先、旧木原線(現いすみ鐡道)につながって、外房線の大原に抜ける計画だったようですが、それもかなわずここで途切れてしまいました…。
木原線の木は木更津の木、原は大原の原ですね。
この先、上総中野までは、険しい山の中になるので、工事ができなかったということでしょうか。
久留里線の終点、上総亀山には何があるのか
到着してすぐ折り返すのもなんなので、1時間後の列車に乗ることにして、周辺を散策します。
亀山といえばローソク…、というのは三重県の亀山で、上総の亀山にはわれわれ木更津市民の水源である小櫃川の上流の亀山ダムがあります。
駅から歩くこと10分ほどでしょうか、植栽で描かれた「カメヤマダム」の文字が見えてきます。
そのままこの道がダムのてっぺん。
バスもすれ違いできるほどの、広い天端(てんば)になっています。
左に広がるのがダム湖である亀山湖。
波もなく本当に静かな湖で、湖畔にある建物が鏡のように湖面に映っていました。
そしてダムを挟んだ右側は小櫃川。
ダムはこんな感じになっています。
コロナ前は年に2回ほど放流イベントがあって、こんな感じでダムのそばで迫力ある放流の様子を見せてもらうことができました。(2018年の開催時の写真)
ダムのわきには亀山やすらぎ館という施設があり、観光案内や食事も楽しめます。
ダムならではのダムカレーも楽しめるみたいです。
今回は行ったのが営業時間外で食べられませんでしたが、ダムカレー、食べに行かなきゃ!
また、亀山湖畔には温泉もあり、亀山温泉ホテルでは日帰りでも入浴とおいしいランチを楽しむことができます。
そして釣り人にはブラックバスやヘラブナ釣りができることでも有名ということです。(釣りやらないのでわからない…)
貸しボートのお店などもありました。
さらに亀山湖といえば、近隣の養老渓谷と並んで、日本一遅い紅葉が楽しめるスポットとしても有名ですね。
釣り、紅葉、温泉、ランチと亀山湖だけでこれだけ楽しむことができます。
やっぱり車を使っちゃう…
これだけ魅力のある亀山湖周辺ですが、久留里線で行くか?と聞かれると、答えはやっぱりNOと言わざるを得ません。
鉄道好きのなかぶがこうなので、普通の人はまず間違いなく交通手段は車を選択することになると思います。
木更津や君津の市街地からなら房総スカイライン経由で40~50分ほどのところ、久留里線を使うと木更津から70分もかかってしまい、東京都心からでも車なら1時間半ほどで到達することができるので、観光客に久留里線という選択肢はなさそうです。
バスもあるし…
東京駅(アクシー号)、千葉駅(カピーナ号)からの高速バスも久留里駅前、平山、松丘、亀山・藤林大橋※という名前の停留所で東京、千葉と久留里線沿線を結んでいます。
※亀山・藤林大橋は千葉からの路線のみで、東京からは笹が最寄りになります
上総亀山駅近くの停留所、亀山・藤林大橋停留所には1日9本の千葉行きの運行があり、千葉駅まで最速1時間20分で行くことができます。
さらに停留所そばに高速バス利用者用駐車場も完備。
近くの笹停留所を通る東京行きは1日15便、地元の人でも、東京、千葉に行く場合は高速バスを使ってしまうことでしょう…。
デマンドタクシーも
君津市ではデマンドタクシーきみぴょん号(運行事業者:大新東)も運行しており、小櫃・上総地区のエリア内であれば1回400~500円で移動することも可能です。
デマンドタクシーってなに?という方のために、君津市のサイトに説明がありました。
Q デマンドタクシーとはどのような乗り物ですか。
君津市ホームページ 君津市デマンドタクシーQ&Aより引用
A タクシーの便利さと路線バスの手軽さを併せ持った乗り物です。
利用するには予約が必要です。予約なしでは乗れません。
予約状況によっては、他のお客様と乗り合いになる場合があります。
バスのように停まるところはある程度決まっていますが、運行時間帯であれば自分が好きなときにお願いすれば来てくれるという乗り物ですね。
詳細は君津市のホームページに記載がありますが、便利そうな乗り物です。
このように久留里線の末端部を取り巻く交通環境は、残念ながら「久留里線なくなっちゃっても…」と思わせる環境になってしまっています。
駅は地元の方がしっかり管理
利用者が少ない、久留里から先の各駅ですが、どの駅もトイレが設置され、地元の方によりきれいに管理されていました。
※平山と上総松丘は乗車日とは別の日に見に行ってみました
平山駅
駅舎とは別に男女別とバリアフリーのトイレが設置されていました。
駅舎の中は落書きなどなく、きれいに掃除されており、快適に列車を待つことができそうです。
ホームには地元の人が整備したと思われる花壇も設置されていました。
上総松丘駅
駅舎とトイレが一体の建物になっていました。
駅舎には松丘ふれあい館の名称も。
平山駅と同様、こちらもきれいに掃除されており、快適に列車を待つことができそうです。
ホームから駅舎に向かう通路には、プランターに植えられたお花が目を楽しませてくれます。
上総亀山駅
終点の上総亀山駅も駅舎のわきにトイレが設置。
ほかの2駅に比べると年季が入っていますが、もともとは有人駅だったのか、窓口のようなものがありました。
ただし、改札口にあたる場所には、乗車駅証明書発行機がぽつんと置かれているだけ。
もしかすると、多客期となる紅葉の時期だけは、臨時で駅員が配置されるのかもしれません。
夜間滞泊があるので、駅舎内には乗務員の詰所があるようでした。
旅客用の待合室はきれいに保たれており、こちらも快適に列車を待つことができそうです。
駅のわきにはこんなベンチも。
この会の方々が各駅の駅舎を守ってくれているのでしょうか。
どの駅もきれいに保たれており、利用者としてはありがたいですね。
取り巻く環境は厳しい…でしょうか
道路が整備されたことにより、モータリゼーションが進行、それによる利用者減のために厳しい状況に置かれている久留里線の久留里ー上総亀山間。
現状でも代替交通機関がある程度用意されているため、今後長期にわたって維持していくのはなかなか困難なような気がします。
魅力的な観光地ではあるものの、列車の需要にまでつながるかというとそうでもなさそうだし…。
そんなこんなを考えながら、乗車駅証明書を取って8:48の列車で上総亀山駅を後にしました。
乗車駅証明書を取ったら、車掌さんが乗務している列車では車掌さんから乗車券を買っておいた方がよいようです。
木更津駅の改札口で精算の行列ができていたので。
ということで、久留里線に関しては今後も注視していきたいと思います。
ではでは~